2023年02月28日

映画「パラドクス」ネタバレ覚書


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2014年メキシコ映画。ジャンルはサスペンス。

内容:無限ループに囚われてしまった人々の話。

・そこだけ聞くと「The Backrooms」っぽいがどちらかといえば「SCP」寄り。
・怪人、怪物などのエネミーは出現しない。
・サスペンスであるがホラー要素は皆無。不思議系であり怖くはない。



●かなり激しいネタバレなので見てない方はバックするかこのページを消してください。

※この記事は映画を最後まで見ていないと理解できません。


※本記事内では非常階段世界の登場人物を刑事、弟、兄。荒野の一本道世界の人物は父、息子、娘(母)と表記します。
 ループの解説では中年・若者・生贄と表記します。↑はこの順です。



【概要】

 兄弟が何らかの悪さをして、刑事に追われて屋内の非常階段に逃げ出す。
 刑事は発砲して兄の足に命中させる。その直後、大きな爆発音がして間もなく3人は非常階段内のスペースに閉じ込められたことを知る。階段が無限ループしてたり自販機の中の物が復活したり不可思議な現象が起きて取り乱すなか、兄が出血多量で死亡した。

 画面が切り替わり、一組の親子が外出しようとしていた。再婚したばかりの父親と母親、再婚相手に馴染めない思春期の息子、無邪気な幼い娘。あと息子が飼育しているペットのハムスター。
 無人の荒野を車で進んでいくと、ガソリンスタンドで父が娘にアレルギーの原因入りのジュースを飲ませてしまう。さらに進んだ先で案の定、妹がアレルギーを発症して倒れてしまうが、そこで爆発音が響き、ループに囚われてしまう。妹は死亡して家族の心はバラバラになる。

 画面が切り替わり、前回から35年が経過した非常階段世界に移る。刑事は年老いて弟は中年になっていた。中年は刑事の介護をしながら体を鍛える日々を送り、自販機から食料や水などを得て生活していた。
 不明な条件で無機物が増殖するらしくペットボトルの中に排泄し、水のペットボトルを吊り下げ、穴を開けてシャワー代わりにするなど様々な工夫が見られる。衣類なども増殖するらしく、服やシャツをタオル代わりにしていた。あと謎宗教の開祖になってた。

 荒野の一本道世界の35年後、父と母は老人となりクウネルヤルの生活を送り、息子は自立して一人暮らしをしていた。同じループ内であっても家族内のわだかまりは解消されることはなく、半ば疎遠のような状態だった。

 ある日母が亡くなり、埋葬のために父と息子は最後の別れをしていた。その場で父もうずくまり、死が迫った瞬間に全てを思い出し、本当の自分はルーベンという名前で子供の頃に学校の遠足で湖に行き、ループに巻き込まれたと語った。そして息子にパトカーに乗るなと忠告。
 同時に非常階段世界でも刑事が息を引き取ろうとしていた。自分は荒野の一本道世界の息子であると弟に伝え、エレベーターのスイッチを押すなと警告した。二人の老人の人生が交差していく。

 その後、両方の世界の中年となった若者たちは暫くは我慢した生活を送っていたが、やがて限界が来て息子はパトカーに乗り込み、弟はエレベーターのスイッチを押した。

 その瞬間、意識は次の人格に切り替わり、非常階段世界の弟はホテルマンとなり、荒野の一本道の息子の方は、切り替わった瞬間に持ち出そうとしていた荷物やハムスターをその場に落とし、さっさとパトカーに乗り込んで刑事となった。

 ホテルマンとなった弟ことカールはエレベーターに乗り込んできた新婚カップルを案内し、ホテルの廊下で蜂を放って新郎を殺し、カールと花嫁による新たなループが始まった。

かなり端折ったが、以上!





【考察の真似事】



●ループの流れ

 ループ開始には中年、若者、生贄の3人が必要。
 中年はループ経験者で若者は次のループ開始要員。
 中年が生贄の処刑を実行し、生贄の死が確定した時点でループが開始される。合図として爆発音が響き渡る。
 中年には殺意の欠片もなく、処刑は無意識の間に行われる。生贄の処刑は中年本人とは別人格が行っている可能性あり。
 ループ開始から35年経過して中年は老人に、若者は中年となる。
 同年、老人は死亡するがループは中年に受け継がれる。老人は引き継ぎ時に初めて前回のループやそれ以前の記憶が蘇る。
 受け継がれるときに中年は別の人格の記憶に支配され、それまでの記憶を失う。
 前回のループ終了から間もなく、中年は新たな若者と生贄を相手にループを開始する。当然、中年に前回のループの記憶はない。




●ループには赤い手帳が必要。

・赤い手帳は、持ち主である中年に意識されないまま所持され続け、死の間際に若者に継承される。
 ループ中に中年が赤い手帳を読んでしまえば、若者と情報を共有することで次のループを回避できてしまうので、死の直前に若者に対して警告をする段階になるまで存在自体を忘れていると考えられ、同時に中年は無意識に手帳を守り続けていると思われる。


・赤い手帳にはループに関することが全て記載されていると考えられるが、生贄を始末する方法が書かれているのでループ経験者達が書いたとは考えられない。


・老人たちが死ぬ前にパトカーに乗るなとかエレベーターのボタンは押すなといった未来を予知するような警告を発するが、おそらく赤い手帳には全てのループについて書かれていて、中年は若者&生贄と合流するまでに一通り読んだと思われる。そこから次のループ案件を推測したのではないかと考えられる。


・赤い手帳が開かれる時、必ず次のループのターゲットや殺し方について書かれたページが開くようだ。


・作中で手帳にまつわるイベントはないのに明確に受け継がれてきた描写があることから、この手帳がループを引き起こしている正体であると推測する。SCPで収容しなきゃ!





●ハムスターについて


・ハムスターが35年間変わらぬ姿で生き続けている。明らかにおかしいw なんだコイツ! 人間以外は不老不死か?


・スタッフロール後、ハムスターがカゴの外から何処かに去っていく映像が収録されている。はっきり言って意味不明だ。いつか答え合わせは有るのだろうか?


・ハムスターといえば、再生時間1時間を超えた頃、老人となった刑事が自分の名前を連呼しているシーンの後、エスカレーター世界が映し出されてウエディングドレスを着た老婆の手から少年と思しき人物が、ハムスターと思われる生物を連れ出している一幕がある。

 ハムスターを所持している少年は荒野の一本道の息子だ。息子は刑事となり、非常階段の弟がホテルマンとなり、ウエディングの老婆はその次の若者だ。次の世界は少なくとも電車、湖ループを挟むので順番が合わない…… 非常に不気味だ。もしかしたらハムスターもループのげんい……考えすぎかw

 他作品の過度のネタバレになってしまうがここに描いておく。この監督の次回作でダークレインという作品がある。そのラストである人物が複数の本を手に取るシーンがあるが、その中にパラドクスと言う題の黒い本があった。ダークレインで出てくるのはパラドクス要素はこの一瞬だけだ。

 当初は他所で言われている事はなくただの宣伝だろうと思ったが、その人物とババアからハムスターを奪っていく人物の年齢層が非常に似通っていることに気付いた。エスカレーター世界では中年であるウエディングババアと若者という組み合わせのはずだ。

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※老婆より小さい手

 ウエディングババアはループにハマった時点で20歳としておくが、それから2回のループで70年が経過。赤い手帳が若者の手に渡って次のループに行った時の見た目と同じなので最後の年だろう。最初の年齢がブレたとしても85から90以上となる。ハムスターを取っていった人物の手は非常に幼かった。10歳前後だろう。その頃にはウエディングババアは最低70歳以上で産める筈も育てられる筈もないと思われる。それならこの子供はどこから湧いたのだろうか? もしかしたらダークレインの彼なのかもしれない。

 ちなみに、ダークレインは本作の続編ではなくほぼ無関係な話だ。パラドクスの真相!とか仰々しい紹介をしている人々が見受けられるが、パラドクス要素は上に書いた程度なので頑張って見る必要はない。





●ループ中はあらゆる物が増殖する?

・非常階段では自販機の中の物だけでなく登場人物たちの荷物まで増殖していた。
 26時間経過した時点で自販機の物は全て補充されていて刑事が取り乱すシーンがあった。


・増殖する条件は不明な点が殆どだが恐らく24時間経過、無機物であること、増える瞬間に人目に付かないこと、ループ開始時にはそのスペースにあった物が取り出されてそこに物が無い状態。これらは確実にあると思われる。だがこれらはあくまで非常階段世界の条件であり荒野の一本道世界始め、他所では適応されない可能性はある。


・どちらの世界も多くの物が増殖しており、荒野の一本道世界では自動車すら増えていたので大きさや重さはあまり関係ないらしい。車が増やせるなら荒野の一本道世界の息子は何故、車を利用しない生活をしているのだろう?車内を改造すれば快適な生活が可能なのに、わざわざ服で作ったのテントに住むのは理解に苦しむ。


・物が増殖し続けるなら35年もあれば、非常階段世界のスペースは物で埋め尽くされてなければ不自然だ。特に水は一人頭毎日500mlペットボトル3本は必要だと思われる。35年間毎日なので、スペースの半分くらいはペットボトルで埋め尽くされてなければ計算が合わない。トイレボトルもあの数では1年分にも満たないだろう。ご都合主義か?


・壁に貼ってあるサンドイッチが腐敗している様子がない。時間の概念がおかしくなったからだろうか?
 非常階段世界の兄が骨になって信仰対象になっているが、死体は腐敗しないと思われるので肉の部分が何処に行ったか気になる。





●息子の苦悩とループ終了の可能性

荒野の一本道編で中年となった息子が母親の名前に聞き覚えはなく母親はいないと答えた。最初は良い年こいてガキ臭いなと思っていたが、見返してみると様子がおかしい事に気付いた。母親は居ない発言は両親への反抗心から来るものだが、母親の名前の方はガチで忘れているように見えた。ループ世界に入ってしまうと新情報が無くなるので過去の情報が希薄になるはずがない……

 と思っていたが、答えはその少し前で示されていた。息子のカバンの中から吸入器が出てくる、よく見たら壊れてない。娘が死ぬ原因となった故障した吸入器はループ開始前(爆破音発生直前)に壊れたので、ループでは新品としては増殖しない。

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※壊れてない……

 つまり、予備の吸入器は息子が持って来ており、母と息子は当時父を責めたが、息子は吸引器を探してないのだ。息子が普通に自分のカバンを探せば見つかったのに…… 
 娘が死んだ一番の原因は父だが、同率で自分も原因ということになるが、我々視聴者側から見れば特殊な力によって無意識の間に処刑に加担した可能性もある。が、本人にはそれが一切解らないので、この件は息子の心に大きな傷を負う原因となった。

 その後、父が息子に合うために娘の人形を置くが、息子はそれを強く握りしめた。初見では父に対する怒りと解釈したが、実際は娘の死について責任を問われる時が来たと強く恐れたのだ。それを踏まえると父と息子、それに母に対する態度も理解できる。

 老人になった親のセックスが見るに耐えないから独り立ちと解釈した人が多い様だが、実際は吸引器を探さなかったという重すぎる責任から逃避するために全てから逃げ出したのが独り立ちの正体だったんだよ!ナンダッテー!


 だが問題はそこではない。非常階段世界と違って、この荒野の一本道世界ではループ条件を未達成にすることができ、延々と続くループ地獄を終わらせることができるのだ。

 父が抗えない謎の力で娘にアレルギー入りジュースを飲ませたとしても、息子が鞄の中を隅々までよく探せば吸入器が見つかり、娘を助けることができる。助けた瞬間に生贄が死ぬという条件が破綻してループが発生しなくなる。家族は元父の勤めるホテルに辿り着き、息子が刑事になることはないので兄弟は非常階段に逃げる必要がなくなり、妖怪ウエディングババアもホテルマンに合わずに新郎とホテルの部屋に入ってズッコンバッコンでき、一つ解決できればドミノ倒しのように全てが一気に解決していくのだ。

 つまり、この荒野の一本道世界では湖の世界終了直前、父が腕かどこかに息子の鞄をよく調べろとメモか、ペンがなければ体に傷をつけるなどして残しておけばループ世界を破壊できる可能性があるということだ!





【補足】

・ジャケット、この記事の一番上にいる女性は作中に登場しない。誰?何で入れた?ジャケ詐欺は悪!
 担当者は下請けかどこかに出向&そのままフェードアウトの刑が妥当w


・最初の35年後のシーンを見て、ふと、綾小路きみまろの漫談を思い出してしまい年老いた夫婦を見ながら吹いてしまったw


・人間とハムスター、植物しか生き物が居ないと思われがちだが、実はハエも存在している。35年後のガソリンスタンド内にいる。ハエも不老不死でループしているのだろうか?
 蚊や蝿がループ内に存在するなら、湖世界の難易度が一気に上るなw


・実は非常階段世界は刑事が発砲する前、兄弟が非常階段に到達した時点ですでに扉に取手が無い。ラスト付近の回想では当然、階段側にも取手があることが確認でき、中年、若者、生贄が揃った時点でループ条件が成立していることが解る。しかし、爆発音がするまでは取手をつけておくべきだった。これは流石に手抜きだと思う……
 ちなみに、最上階である9階から上に伸びる階段が存在しているが、屋上の存在が言及されてるのでこれはセーフw


・荒野の母親が亡くなった直後に父親が死亡した。もしかしたら母親もループが終了するから死んだのかもしれない。母は娘が亡くなった時に心が壊れて以来、作中であったような重度の認知症患者みたいになってしまったらしい。これ、中年若者生贄以外のイレギュラーが居た場合は、中年と若者だけが存在する状態にするためにそのような処置が行われるのかもしれない。ルール上は不死だが余計な影響が出ないように心を殺すとか。


・ループ中の絶望的な状態でも登場人物の誰もが自殺という手段を用いないのは、中年が生贄を始末したときのように精神に何か特殊な力が働いていると考えられる。並びに発狂して相手を殺すこともしないのも同じ理由だとお思われる。


・中年から若者に引き継がれる際は新たな身分や服装が用意されるはずだが、エスカレーター世界だけは例外となっている。花嫁は廊下世界の若者であり、彼女だけがしれっとウエディング姿で続投している。
 こういった「例外」はバックルームやSCPなど似たような創作世界では解決の鍵となる場合が多い。おそらく、ウエディングババアにはループ世界を終了させる可能性を秘めた何かがあるのだろう。もし続編を作るならこの人を主人公にしてほしいね。


・非常階段世界で通気口のような場所が見られるが、アレについて言及がないのは残念だった。まあ出れないことは解ってるんですがねw でも少しで良いから描写して欲しかった。もしかしたらハムスターが居たかもわからん。


・この作品では聡明で健康に気を使う若者と自堕落でだらしない老人の描写がしばしば見られる。メキシコではそうなのかもしれないが、日本ではほぼ間逆なので違和感が半端ない。まあ、俺は若者の頃から今でも自堕落でだらしないままだw これが本当のことだったらループ世界の俺もきっと普通に堕落してるのだろうw
 ていうかさ、自分はループで苦しめられてるのに本物の自分って何?考えれば考えるほどムカつく存在だよね?自堕落になってムカつく自分にロクでなしな人生をプレゼントしよう!www


・だらしないといえば、荒野の一本道世界で35年後に父が裸足で出歩いている。自堕落になって風呂も入らず服や髪がボサボサなのは理解できるが、大量にガラスの破片が転がっている場所で裸足なのは流石に無理がある。堕落はしてても痛みはあるだろう? ここが本作で一番ダメだと思ったところw


・老人たちは何処かにいる本物の自分たちにエネルギーを贈るためにループ世界があると説明していたが、終盤で走馬灯のように彼らの本来歩むべきだった人生が流れるが、とてもエネルギーを受信しているとは思えない普通にろくでもない人生だったw
 それが本当だとしたらループ世界で苦しんだ意味が無くて本当に草! 意味のない1億年ボタンみたいで草ァ!
 ……何を根拠にこの発言したんだろうね? 誰かに聞いたわけでもないだろうに、本当に不思議だ。


・作中で明確に描写されたループ世界は6箇所。非常階段、荒野の一本道、ホテルの廊下、エスカレーター、湖、そして電車。
 他にもループしている箇所はあると思われるが種類は有限であり、それらは全て赤い手帳に記載されていると思われる。ループ世界そのものが無限に生まれているのなら、老人が未来を助言するシーンに齟齬が生まれる。


・作中の非常階段世界、荒野の一本道世界の難易度はイージーと言わざるをえない。どちらも食料品などを販売する場所があるからだ。電車世界とホテルの廊下世界はプライバシーが守れるくらいには広く、見えない場所に自販機がある可能性があるので難易度はイージーかノーマルと言える。

 問題は湖世界とエスカレーター世界。湖世界の方は3畳程の狭いイカダで周りは陸地が見えない一面の水。そこに男一人少年一人で35年間、何も起きないはずもなくw

 湖世界と同様の問題を抱えた上で更に悲惨なのがエスカレーター世界だ。場所的に水も食料も得られず、相方の若者(男?)は妖怪みたいなウエディングババアと一緒に居なければならないw 更にああいった機械は細かな振動が付き物で、寝ることすら難儀するだろう。悲惨この上ないw


・作中に流れるクラシック音楽は作曲家のEdy Lanという方がシューマン交響曲4番をベースに改造したものらしい。


・個人的な感想だが、監督のイサーク・エスパン監督は狭く動きがない状態で人間ドラマを重視した作風が多く、どこか三谷幸喜監督を彷彿させる。


posted by RYVO at 04:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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